保存療法
歯髄保護
やむを得ず、歯に虫歯(う蝕)ができてしまった場合には、う蝕部を取り除き、人工物を充填します。う蝕が大きく歯髄に及んでいる場合、歯髄の生活反応を確認し、歯髄保護の処置(覆髄)を行います。
可能な限り、歯髄を保護することが、歯の予後に影響を与えます。
歯髄を保護する際に、歯髄の上に充填する材料には種類があり、当院ではMTA(自費診療)を推奨しています。他にも、水酸化カルシウム製剤(保険診療内)もありますが、現在、MTAが一番優れている材料であると報告されています。
歯髄を残す利点
- 歯髄固有の感覚受容センサーが適切に機能し続ける。
- 咀嚼時に過剰な咬合力が歯に加わることを予防することもできる。
※無髄歯は咬合力を感知する受容センサーが反応するまでに有髄歯と比べ2.5倍の咬合力が必要とされます。(Randow&Glantz1986;Stanley1989)
※無髄歯は補綴物の辺縁破折抵抗性が低下し、齲蝕になりやすくなります。
齲蝕や歯根破折をさけ、歯のサバイバルレートを高めることができます。
歯髄を残す方法
水酸化カルシウムによる覆髄
[ 長所 ]
- 水酸化カルシウムのpHは高く使用後初期は殺菌性を有する。
- 齲窩での酸性度を中和する。
- 象牙芽細胞や象牙芽細胞様細胞の分化を促進させる。
[ 短所 ]
- 象牙質への接着は弱い。
- 機械的に不安定。
- 覆髄後、吸収され続ける。(修復象牙質にあるトンネル状の穴が水酸化カルシウムが吸収したあとの細菌の突破口になる。)
MTAによる覆髄
[ 長所 ]
- 溶解性が低い。
- 機械的強度が高い。
- 辺縁封鎖性が優れている。(アパタイト結晶が形成され微小漏洩を予防する。)
- 抗菌作用がある。
- 生物学的活性があり、成長因子をもつ細胞を増加させることができる(石灰化を促す)。
- 細胞毒性もほとんどない。
[ 短所 ]
- 歯の変色の報告。(MTAを充填した周囲象牙質にボンディング剤を使用し低減させることができる。)
- 硬化時間が長い(2.5時間以上)